歌曲は、これに付加語を添えることにより、多くの種類に分けることができる。
(a)宗教歌曲 神やイエスに対する信仰心を歌ったものが多い。J・S・バッハに通奏低音の伴奏による独唱歌曲がある。
(b)世俗歌曲 宗教歌曲の対語で、バロック時代に盛んに作曲された。恋愛詩や騎士道精神を歌った12、3世紀の、南フランスのトルーバドゥール、北フランスのトルーベール、ドイツのミンネゼンガーなど、吟遊詩人の歌もこれに属する。
(c)叙情歌曲 世俗歌曲のうち叙情詩に作曲されたもの。リートと同義で、シューベルトの『菩提樹{ぼだいじゆ}』など日本で一般に知られている歌曲の大半はこれに属する。
(d)物語歌曲(バラード) 19世紀前半に活躍したレーベに代表作がみられる。シューベルトの『魔王』やシューマンの『ふたりの擲弾兵{てきだんへい}』はバラードである。
(e)日本歌曲 滝廉太郎{たきれんたろう}以後の日本人による創作歌曲に対し、近年この名が使われている。
(a)有節歌曲 詩の各節を同じ旋律で歌うもの。山田耕筰の『赤とんぼ』はこの例で、詩の第一節は「ゆうやけこやけの……」、第二節は「やまのはたけの……」と歌い出される。
(b)通作歌曲 詩の各節にそのつど新しい旋律が付されるもの。前出のバラードはこの形式で作曲されている。
(c)変奏有節歌曲 前二者の融合したもの。
(d)連作歌曲 一貫した内容、曲想をもつ一連の歌曲。シューベルトの『冬の旅』は24曲から、シューマンの『詩人の恋』は16曲からなる連作歌曲である。
(a)独唱(単声)歌曲 歌われる声部が一つのもの。先に例としてあげたシューベルト、シューマン、山田耕筰の歌曲はすべてこれに属する。
(b)重唱(多声)歌曲 歌唱声部が複数あるもの。四声部のものがもっとも多い。ルネサンス時代のジョスカン・デ・プレなどのシャンソン、ハインリヒ・イザークの『インスブルックよ、さようなら』などのほか、19世紀のシューマンに代表されるパート・ソングpart-songもこれに属する。
(a)ピアノ伴奏歌曲 もっとも一般的なもの。
(b)オーケストラ伴奏歌曲 マーラーの『大地の歌』やシェーンベルクの『月に憑{つ}かれたピエロ』など。
(c)無伴奏歌曲 多声で書かれるのが普通で、ドイツ・ロマン派の作曲家には男声、女声、混声による三声、四声の作品が数多くある。