STORY
恒例の雪まつりに賑わう札幌。クラブ“北斗”のマダム下条香は素人ばなれした歌声の持主。北海テレビの山上は香を是が非でも歌手にしようと口説いていた。折から歌謡曲の重鎮としてニラミの利く作曲家瀬戸貴一郎の来道は、香の歌を世に出す絶好の機会到来と山上はひとりで張切っていたが、香は自分のことより夫の和彦の新曲を売出すことに懸命だった。周囲が期待した瀬戸と香の出会いは意外にも最悪の状態になった。和彦の曲を瀬戸がケナしたからだ。その夜遅く、今売出しの作曲家神卓也が“北斗”に現われた。卓也こそ一年前に香との結婚の約束を棄てた男だった。香は卓也に会い彼の新曲を歌い、心で動揺した。香は夫の和彦の曲を世に出すことを償いに和彦と別れ卓也の許へ戻ろうかと思い迷う。瀬戸貴一郎は実は香の父であり、卓也と和彦は瀬戸の教えを受けた同門の弟子だった。和彦には香の気持が手にとるように分っていた。和彦の考えはきまった。自分が身を引けば万事うまくいく。そこで泥酔して暴れて和彦は怪我をした。そのことがかえって香との絆を強く結び直した。半年後、香は和彦と共に上京し歌手になった。ナツメロを唄う覆面歌手として人気が爆発した。瀬戸も覆面歌手が香であることを知ったが、眼を病み、日毎に視力が衰えていた。失明寸前の父の容態を聞いた香は、瀬戸メロデーを歌うことを決意した。香が覆面を脱いだ日。父との劇的な対面が用意されていた。相擁する父娘は演出を越えた感動で、すべての人の心を打った。